アーキテクチャ
OpenTelemetryコレクターは、テレメトリーを受信、処理、および複数のターゲット(オブザーバビリティバックエンドなど)にエクスポートできる実行可能ファイルです。
コレクターは、テレメトリーデータの受信と送信のためにいくつかの一般的なオープンソースプロトコルをサポートしており、より多くのプロトコルを追加するための拡張可能なアーキテクチャを提供します。
データの受信、処理、およびエクスポートは、パイプラインを使用して行われます。 コレクターを構成して、1つ以上のパイプラインを持たせることができます。
それぞれのパイプラインには以下が含まれます。
同じレシーバーを複数のパイプラインに含めることができ、複数のパイプラインが同じエクスポーターを含むことができます。
パイプライン
パイプラインは、受信から処理(または変更)、そして最終的にエクスポートまで、コレクター内でデータがたどるパスを定義します。
パイプラインは、トレース、メトリクス、ログの3種類のテレメトリーデータ型を操作できます。
データ型は、その構成によって定義されるパイプラインのプロパティです。
レシーバー、プロセッサー、およびエクスポーターは、特定のデータ型をサポートしている必要があります。
サポートしていない場合、構成の読み込み時に例外 pipeline.ErrSignalNotSupported
が報告されます。
次の図は、典型的なパイプラインを表しています。
--- title: パイプライン --- flowchart LR R1(レシーバー 1) --> P1[プロセッサー 1] R2(レシーバー 2) --> P1 RM(...) ~~~ P1 RN(Receiver N) --> P1 P1 --> P2[プロセッサー 2] P2 --> PM[...] PM --> PN[プロセッサー N] PN --> FO((ファンアウト)) FO --> E1[[エクスポーター 1]] FO --> E2[[エクスポーター 2]] FO ~~~ EM[[...]] FO --> EN[[エクスポーター N]]
パイプラインは1つ以上のレシーバーを持つことができます。
すべてのレシーバーからのデータは最初のプロセッサーにプッシュされ、プロセッサーはデータを処理して次のプロセッサーにプッシュします。
プロセッサーは、サンプリングやフィルタリングを行う場合、データをドロップすることもあります。
この処理は、パイプラインの最後のプロセッサーがデータをエクスポーターにプッシュするまで続きます。
各エクスポーターは、各データ要素のコピーを取得します。
最後のプロセッサーは fanoutconsumer
を使用してデータを複数のエクスポーターに送信します。
パイプラインは、構成されたパイプライン定義に基づいて、コレクターの起動中に構築されます。
パイプライン構成は通常、次のようになります。
service:
pipelines: # パイプラインごとに1つずつ、複数のサブセクションを含むことができるセクション
traces: # パイプラインタイプ
receivers: [otlp, zipkin]
processors: [memory_limiter, batch]
exporters: [otlp, zipkin]
前述の例では、2つのレシーバー、2つのプロセッサー、および2つのエクスポーターを備えたトレースタイプのテレメトリーデータのパイプラインを定義しています。
レシーバー
レシーバーは通常、ネットワークポートをリッスンし、テレメトリーデータを受信します。
また、スクレイパーのように、能動的にデータを取得することもできます。
通常、1つのレシーバーは受信したデータを1つのパイプラインに送信するように構成されます。
ただし、同じレシーバーが受信した同じデータを複数のパイプラインに送信するように構成することも可能です。
これは複数のパイプラインの receivers
キーに同じレシーバーをリストすることで実現できます。
receivers:
otlp:
protocols:
grpc:
endpoint: localhost:4317
service:
pipelines:
traces: # "traces"タイプのパイプライン
receivers: [otlp]
processors: [memory_limiter, batch]
exporters: [otlp]
traces/2: # "traces"タイプの別のパイプライン
receivers: [otlp]
processors: [transform]
exporters: [otlp]
上記の例では、otlp
レシーバーは同じデータを traces
パイプラインと traces/2
パイプラインに送信します。
この構成では
type[/name]
の形式の複合キー名を使用しています。
コレクターがこの構成を読み込むと、結果はこの図のようになります(プロセッサーとエクスポーターの一部は簡略化されています)。
flowchart LR R1("`#quot;opentelemetry-collector#quot; レシーバー`") --> FO((ファンアウト)) FO -->|パイプライン 'traces'| P1["`#quot;memory_limiter#quot; プロセッサー`"] FO -->|パイプライン 'traces/2'| P2["`#quot;transform#quot; プロセッサー`"] P1 ~~~ M1[...] P2 ~~~ M2[...]
同じレシーバーが1つ以上のパイプラインで参照されている場合、コレクターは実行時にレシーバーを1つだけ作成し、データをファンアウトコンシューマーに送信します。 ファンアウトコンシューマーは、各パイプラインの最初のプロセッサーにデータを送信します。 レシーバーからファンアウトコンシューマー、そしてプロセッサーへのデータ伝搬は、同期関数の呼び出しによって完了します。 つまり、1つのプロセッサーが呼び出しをブロックすると、このレシーバーに接続されている他のパイプラインは同じデータの受信がブロックされ、レシーバー自身も新たに受信したデータの処理と転送を停止します。
エクスポーター
エクスポーターは通常、取得したデータをネットワーク上のターゲットに転送しますが、他の場所にデータを送信することもできます。
たとえば、debug
エクスポーターはテレメトリーデータをログ出力先に書き込みます。
この構成では、同じパイプライン内でも、同じタイプの複数のエクスポーターを定義できます。
たとえば、2つの otlp
エクスポーターを定義し、それぞれが異なるOTLPエンドポイントに送信することができます。
exporters:
otlp/1:
endpoint: example.com:4317
otlp/2:
endpoint: localhost:14317
エクスポーターは通常、1つのパイプラインからデータを取得します。 ただし、複数のパイプラインを構成して、同じエクスポーターにデータを送信することもできます。
exporters:
otlp:
protocols:
grpc:
endpoint: localhost:14250
service:
pipelines:
traces: # "traces"タイプのパイプライン
receivers: [zipkin]
processors: [memory_limiter]
exporters: [otlp]
traces/2: # "traces"タイプの別のパイプライン
receivers: [otlp]
processors: [transform]
exporters: [otlp]
上記の例では、otlp
エクスポーターは traces
パイプラインと traces/2
パイプラインの両方からデータを取得します。
コレクターがこの構成を読み込むと、結果はこの図のようになります(プロセッサーとレシーバーの一部は簡略化されています)。
flowchart LR M1[...] ~~~ P1["`#quot;memory_limiter#quot; プロセッサー`"] M2[...] ~~~ P2["`#quot;transform#quot; プロセッサー`"] P1 -->|パイプライン 'traces'|E1[["`#quot;otlp#quot; エクスポーター`"]] P2 -->|パイプライン 'traces/2'|E1
プロセッサー
パイプラインには、順番に接続されたプロセッサーを複数含めることができます。 最初のプロセッサーは、パイプラインに構成された1つ以上のレシーバーからデータを取得し、最後のプロセッサーはパイプラインに構成された1つ以上のエクスポーターにデータを送信します。 最初と最後のプロセッサー間のすべてのプロセッサーは、1つの先行プロセッサーからのみデータを受け取り、1つの後続プロセッサーにのみデータを送信します。
プロセッサーは、データを転送する前にスパンに属性を追加または削除するなどの変換を行うことができます。
また、(たとえば probabilisticsampler
プロセッサーなどによって)転送しないことを決定することで、データをドロップすることもできます。
あるいは、新しいデータを生成することもできます。
同じ名前のプロセッサーは、複数のパイプラインの processors
キーで参照できます。
この場合、同じ構成がこれらの各プロセッサーに使用されますが、各パイプラインは常にプロセッサーの独自のインスタンスを取得します。
これらの各プロセッサーは独自の状態をもち、プロセッサーはパイプライン間で共有されることはありません。
たとえば、batch
プロセッサーが複数のパイプラインで使用されている場合、各パイプラインには独自のバッチプロセッサーがありますが、構成内で同じキーを参照している場合は各バッチプロセッサーはまったく同じ方法で構成されます。
次の構成を参照してください。
processors:
batch:
send_batch_size: 10000
timeout: 10s
service:
pipelines:
traces: # "traces"タイプのパイプライン
receivers: [zipkin]
processors: [batch]
exporters: [otlp]
traces/2: # "traces"タイプの別のパイプライン
receivers: [otlp]
processors: [batch]
exporters: [otlp]
この構成をコレクターが読み込むと、結果はこの図のようになります。
--- title: パイプライン "traces" --- flowchart LR R1("`zipkin レシーバー`") --> P1["`#quot;batch#quot; プロセッサー`"] P1 --> E1[["`#quot;otlp#quot; エクスポーター`"]]
--- title: パイプライン "traces/2" --- flowchart LR R1("`otlp レシーバー`") --> P1["`#quot;batch#quot; プロセッサー`"] P1 --> E1[["`#quot;otlp#quot; エクスポーター`"]]
各 batch
プロセッサーは、send_batch_size
が 10000
で同じように構成されていますが、独立したインスタンスであることに注意してください。
単一パイプラインの
processors
キーで同じ名前のプロセッサーを複数回参照してはいけません。
エージェントとしての実行
一般的なVM/コンテナでは、ユーザーアプリケーションがOpenTelemetryライブラリを使用していくつかのプロセス/Podで実行されています。 以前は、トレース、メトリクス、ログの記録、収集、サンプリング、集計はすべてライブラリが行い、データをライブラリエクスポーターを介して他の永続的なストレージバックエンドにエクスポートするか、ローカルのzPagesに表示していました。 このパターンには、たとえば以下のようないくつかの欠点があります。
- OpenTelemetryライブラリごとに、エクスポーターとzPagesをネイティブ言語で再実装する必要があります。
- 一部のプログラミング言語(たとえばRubyやPHP)では、プロセス内で統計情報の集計を行うことが困難です。
- OpenTelemetryのスパン、統計情報、またはメトリクスのエクスポートを有効化するには、アプリケーションユーザーが手動でライブラリエクスポーターを追加し、バイナリを再デプロイする必要があります。 これは、インシデントが発生し、ユーザーがOpenTelemetryを使用してすぐに問題を調査したい場合には特に困難です。
- アプリケーションユーザーは、エクスポーターの構成と初期化の責任を負う必要があります。 これらのタスクはエラーが発生しやすく(たとえば、誤った認証情報や監視対象リソースの設定など)、ユーザーはOpenTelemetryでコードを「汚染」することに抵抗があるかもしれません。
上記の問題を解決するために、OpenTelemetryコレクターをエージェントとして実行できます。 エージェントは、VM/コンテナ内でデーモンとして実行され、ライブラリとは独立してデプロイできます。 エージェントがデプロイされて実行されると、ライブラリからトレース、メトリクス、ログを取得し、他のバックエンドにエクスポートできるようになります。 またエージェントには、ライブラリに構成(たとえばサンプリング確率など)をプッシュする機能を与えることもできます。 プロセス内で統計情報の集計を行うことができない言語の場合、生の測定値を送信し、エージェントに集計を行わせることができます。
flowchart LR subgraph S1 ["#nbsp;"] subgraph S2 ["#nbsp;"] subgraph VM [VM] PR["プロセス [ライブラリ]"] -->|Push sample spans, metrics| AB[エージェント バイナリ] AB -->|Push configs| PR end subgraph K8s-pod [K8s Pod] AC["`Appコンテナ [ライブラリ]`"] --> AS[エージェント Sidecar] AS --> AC end subgraph K8s-node [K8s Node] subgraph Pod1 [Pod] APP1[App] ~~~ APP2[App] end subgraph Pod2 [Pod] APP3[App] ~~~ APP4[App] end subgraph Pod3 [Pod] APP5[App] ~~~ APP6[App] end subgraph AD [エージェント Daemonset] end APP1 --> AD APP2 --> AD APP4 --> AD APP6 --> AD end end subgraph Backends ["#nbsp;"] AB --> BE[バックエンド] AS --> PRM[Prometheus バックエンド] AS --> JA[Jaeger バックエンド] AD --> JA end end class S2 noLines; class VM,K8s-pod,K8s-node,Pod1,Pod2,Pod3,Backends withLines; class PR,AB,AC,AS,APP1,APP2,APP3,APP4,APP5,APP6,AD,BE,PRM,JA nodeStyle classDef noLines stroke:#fff,stroke-width:4px,color:#000000; classDef withLines fill:#fff,stroke:#4f62ad,color:#000000; classDef nodeStyle fill:#e3e8fc,stroke:#4f62ad,color:#000000;
他のライブラリ開発者およびメンテナーの方へ。 特定のレシーバーを追加することで、Zipkin、Prometheusなど他のトレーシング/モニタリングライブラリからトレース、メトリクス、ログを受け入れるようにエージェントを構成できます。 詳細はレシーバーを参照してください。
ゲートウェイとして実行
OpenTelemetryコレクターは、ゲートウェイインスタンスとして実行でき、1つ以上のエージェント、ライブラリまたはサポートされているプロトコルのいずれかで発行するタスク/エージェントによってエクスポートされたスパンとメトリクスを受信できます。 コレクターは、構成されたエクスポーターにデータを送信するように構成されます。 次の図は、デプロイメントアーキテクチャの概要を示しています。
flowchart LR subgraph S1 ["#nbsp;"] subgraph S2 ["#nbsp;"] subgraph S3 ["#nbsp;"] subgraph VM [VM] PR["プロセス [ライブラリ]"] end subgraph K8s-pod [K8s Pod] AC["`Appコンテナ [ライブラリ]`"] end subgraph K8s-node [K8s Node] subgraph Pod1 [Pod] APP1[App] ~~~ APP2[App] end subgraph Pod2 [Pod] APP3[App] ~~~ APP4[App] end subgraph Pod3 [Pod] APP5[App] ~~~ APP6[App] end subgraph AD [エージェント Daemonset] end APP1 --> AD APP2 --> AD APP4 --> AD APP6 --> AD end end subgraph S4 ["#nbsp;"] PR --> OTEL["`OpenTelemetryコレクターサービス`"] AC --> OTEL AD --> OTEL OTEL ---> BE[バックエンド X] end end subgraph S5 ["#nbsp;"] subgraph S6 ["#nbsp;"] JA[Jaeger バックエンド] end subgraph S7 ["#nbsp;"] PRM[Prometheus バックエンド] end end JA ~~~ PRM OTEL --> JA OTEL --> PRM end class S1,S3,S4,S5,S6,S7,S8 noLines; class VM,K8s-pod,K8s-node,Pod1,Pod2,Pod3 withLines; class S2 lightLines class PR,AC,APP1,APP2,APP3,APP4,APP5,APP6,AD,OTEL,BE,JA,PRM nodeStyle classDef noLines stroke-width:0px,color:#000000; classDef withLines fill:#fff,stroke:#4f62ad,color:#000000; classDef lightLines stroke:#acaeb0,color:#000000; classDef nodeStyle fill:#e3e8fc,stroke:#4f62ad,color:#000000;
OpenTelemetryコレクターは、レシーバーがサポートするいずれかの形式で他のエージェントまたはクライアントからデータを受信するなど、他の構成でもデプロイできます。
フィードバック
このページは役に立ちましたか?
Thank you. Your feedback is appreciated!
Please let us know how we can improve this page. Your feedback is appreciated!